CFP算定ができた後にするべきデータ開示項目やポイントについて分かりやすく解説(1/2)

カーボンフットプリント(CFP=Carbon Footprint of Products)とは、製品やサービスにおける原材料調達から使用、廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス(GHG=GreenHouse Gas)排出量を、CO₂排出量に換算して数値化したものです。これにより、環境負荷を可視化し、削減に向けた指標とすることができます。
CFP算定ができた後にするべきデータ開示項目やポイントについて分かりやすく解説します。CFP算定後にするべきことは4つあります。
(1)GHG排出量が多い部分(ホットスポット)を分析して、GHG排出量を削減できないか検討する
(2)自社の直接排出(Scope1)は自助努力で、エネルギー起源間接排出(Scope2)は購入先や発電方法の変更を検討する
(3)二次データを利用してCFP算定した場合は、川上サプライヤーから排出量を入手し、一次データの割合を増やす
(4)川下企業に自社のCFP算定結果を開示して一次データとして活用してもらい、業界全体のGHG排出量の削減に貢献する
本コラムでは、(4)について深堀して、川下企業に自社のCFP算定結果を開示する理由やその際の開示項目について紹介します。開示項目は各イニシアティブや団体によって異なります。今回と次回の2回に分けて、お伝えします。
本コラムの流れは以下のとおりです。GHG排出の削減努力を一次データとして受渡しする、算定データにデータ収集方法や算定方法などの付帯情報を開示する、各イニシアチブや団体の開示項目を理解するです。
✓川下企業にCFPを開示して一次データとして活用してもらう
✓CFP算定時の条件など付帯情報を開示が求められている
✓日化協CFPガイドラインの開示項目
✓ISO14067:2018の開示項目
✓TfS PCF Data Modelの開示項目(一部抜粋)
CCU・CCSの解説
マスバランスの使用
PDS・DQRの解説
✓はじめの一歩としてEcoLumeではじめてみませんか
川下企業にCFPを開示して一次データとして活用してもらう
元々、CFP算定は環境問題、特に、地球温暖化対策のために、温暖化の原因となっている温室効果ガス(GHG)を削減することを目的にしています。CO₂をはじめとするGHGが増え続けると、夏の気温が高く猛暑になり、夏の期間が長くなります。また、豪雨や豪雪、強風や台風増加など異常気象による災害の影響も多くなります。
そこで、現在、世界各国の政府や企業が増加し続けているGHGを削減する、あるいは、GHG排出量と吸収量が釣合うカーボンニュートラルを2050年までに実現する目標を掲げ取組みをしています。このGHG排出量を削減するために、自社の直接排出(Scope1)や自社が購入したエネルギー起源間接排出(Scope2)を減らすのに加えて、サプライヤーから購入する原料を製造するGHG排出量(Scope3 Category1)を減らす必要があります。
自社工場での燃料燃焼においてCO₂排出量がより少ない燃料を選ぶ、作業工程を改善して燃料自体を少なくすることが考えられます。同様に、購入した電力・熱・蒸気などをCO₂排出量がより少ないものを選ぶ、あるいは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの割合を増やすことが考えられます。
自社がサプライヤーから購入する原料に関するGHG排出量に関してのデータ(一次データ)を受取り、CFP算定の計算に活用できるのが望ましいです。サプライヤー自身のGHG排出量削減効果が一次データを通じて、自社のGHG排出量に反映されるからです。サプライヤーから一次データを受取れない場合、平均値や文献値などから割り出した二次データを元にGHG排出量を計算することになり、川上のサプライヤーの削減努力が反映されません。そこでサプライチェーン全体で川上から川下へ、次々と一次データを受渡してくことで、業界全体のGHG排出量の全体を低減することになります。
つまり、自社の工場や購入したエネルギーのGHG排出量に、川上サプライヤーから購入した原料のGHG排出量を加えて、川下メーカーにCFP算定結果を開示していくことが求められます。イメージは数珠繋ぎやドミノ倒しです。リレーのバトン、駅伝のタスキと同じです。GHG排出量の削減は1社だけの努力だけでは実現することができません。業界全体でチームプレイで一緒に進めていく必要があります。
CFP算定時の条件など付帯情報を開示が求められている
現在、企業は様々なステークホルダーから、CFP算定結果の開示が求められています。例えば、政府(特に欧州)でCFP開示の有無やCFP数値を入札対象にする、CFP開示義務規制、炭素税などが検討・運用されています。金融市場からは企業の格付けランキングなどの評価に繋がっています。さらに、自社製品を納品する取引先企業から開示要請を受けることがあります。
そこで、各企業が独自の基準でCFP算定結果を算定するとステークホルダが混乱するので、一定のルールが設けられています。つまり、CFP算定結果を開示するだけでなく、どういうデータを、何時、どういう基準で計算したのかという条件などを付帯情報として開示することが求められています。例えば以下のような項目を開示します。
・データ収集期間は?
・採用したカットオフ基準は?
・生物起源GHG排出量と吸収量は?
・採用した特性化係数は?
各イニシアティブや団体から認証を受ける場合だけでなく、実務として川下企業にCFP算定結果を開示する際にも、同様に付帯情報を求められることが増えています。以下の3つの代表的なイニシアティブや団体の開示項目を紹介します。
(1)日化協CFPガイドラインの開示項目 9個
(2)ISO14067:2018の開示項目 20個
(3)TfS PCF Data Modelの開示項目 70個
逆を言えば、データ収集の時点やCFP算定において、開示項目を意識して付帯情報を整理しておく必要があります。
なお、本コラムで紹介する開示項目は、コラム執筆時点(2026年1月現在)の情報です。今後イニシアティブや団体のドキュメント等が更新され変更になる可能性についてご留意いただきたい。最新ドキュメントでの更新にキャッチアップしてください。ただし、大きな方向性は変わることがないので、情報が古くなった場合でも、本コラムを参考にしていただければ幸いです。
日化協CFPガイドラインの開示項目
日本化学工業協会の「化学産業における製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン」では、算定結果以外に、以下を開示すべき項目として挙げています。
(1)製品名・型番
(2)評価範囲
(3)評価対象外としたプロセス
(4)評価したGHG排出量の種類/使用した地球温暖化係数、参照したプロトコル
(5)基準フロー
(6)使用した電力・蒸気排出係数の出典
(7)使用した二次データベース・文献
(8)外部へ販売したCO₂の取扱い
(9)参照したガイドラインの名称
参考:日本化学工業協会 化学産業における製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン 2023年2月28日
ISO14067:2018の開示項目
ISO14067:2018では、CFP定量化に関連する次の情報を、CFP調査報告書に含めなければならないとしています。
合わせて経済産業省・環境省のカーボンフットプリントガイドラインを参照してください。
以下は、経済産業省・環境省のカーボンフットプリントガイドラインにて記載されている、ISO14067:2018の要求事項です。
(1)機能単位(算定単位)と宣⾔単位
(2)システムバウンダリー
(3)重要な単位プロセスの⼀覧
(4)データソース、データ収集に関する情報
(5)対象としたGHGの⼀覧
(6)選択された特性化係数
(7)選択したカットオフ基準と、カットオフ対象としたもの
(8)配分の⽅法(1次データが配分計算したものであるかどうかを含む)
(9)⼟地利⽤等の特定のGHG排出・除去(吸収)のタイミング(該当する場合)
(10)使⽤したデータに関する情報(1次データ⽐率、データの選択基準、品質に関する評価を含む)
(11)感度分析及び不確実性評価の結果
(12)電⼒の取り扱い(系統電⼒の排出係数の計算や関連する制約を含む)
(13)解釈の結果(結論と限界を含む)
(14)価値に基づく判断をした場合の開⽰と正当性の説明
(15)スコープ(機能単位、システムバンダリー等)の正当性
(16)ライフサイクルのステージの説明(使⽤段階や廃棄・リサイクル段階のシナリオの説明を含む)
(17)算定に⽤いた使⽤段階や廃棄・リサイクル段階のシナリオと異なるものを採⽤した場合に、最終的な結果に与える影響の評価
(18)CFPの算定対象とした期間(使⽤したデータの対象期間を含む)
(19)参照した製品別算定ルール、⼜はその他の要件
(20)パフォーマンス・トラッキングに関する説明(該当する場合)
参考:ISO14067:2018 Greenhouse gases — Carbon footprint of products — Requirements and guidelines for quantification (Edition 1, 2018)
経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」2023年3月
経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン(別冊)CFP実践ガイド」2023年5月
前半のコラムでは、GHG排出の削減努力を一次データとして受渡しする、算定データにデータ収集方法や算定方法などの付帯情報を開示する、日化協CFPガイドライン・ISO14067:2018の開示項目を説明しました。後半のコラムでは、TfS PCF Modelの開示項目を解説予定です。
はじめの一歩としてEcoLumeではじめてみませんか
この記事ではCFP算定後にするべきこととして、一次データとして活用するために算定結果の開示について触れ、その際に必要となる開示項目(付帯情報)について解説しました。各イニシアティブや団体によって開示項目は異なります。いずれの場合も、データを開示するまた付帯情報を渡す前提で、ライフサイクルフロー図やデータ収集などCFP算定の作業を始める必要があります。自社のCFP算定を始めるために、もし、CFP算定の知見や人的リソースが無い、化学業界特有のプロセスが難しい、作業負担が大きく手が回らないなど、CFP算定に関わるお悩みがあれば、化学品向けCFP算定支援サービス「EcoLume」で始めてみてはいかがでしょうか。
BIPROGYでは2025年1月に、一般的に算定が難しいとされる化学品に特化したCFP算定支援サービスの「EcoLume®」を開発しました。「EcoLume®」は、お客様が抱えている多種多様な課題に対して、①算定支援コンサルティングサービス、②算定業務代行サービス、③算定システム、3種類のサービスを展開することで、それぞれのお客様に最適なご提案を実現します。例えば、①算定支援コンサルティングサービスでは、今回の記事にある開示項目についての詳しい解説をさせていただきます。③算定システムでは、開示項目をとりまとめてレポートする機能をご用意しています。ご連絡お待ちしております。