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2026.6.23

CFP(カーボンフットプリント)の開示は義務化されるのか?最新の規制動向と化学業界が今すぐ動くべき理由

「CFPの開示は、いつか義務化されるのだろうか?」

多くの化学メーカーの担当者が、この問いを頭の片隅に抱えながら日々の業務を進めているのではないでしょうか。取引先からの開示要求は増えつつあるものの、「義務ではないから後回しで良い」と判断している企業も少なくないのが現状です。

しかし、2025年から2026年にかけて、国内外の規制環境は大きく動きました。結論から言えば、CFPの開示は”義務化に向けた助走フェーズ”に確実に入っています。特に化学業界は、その構造的な特性から、他業界よりも早く・重く、この波の影響を受ける立場にあります。

本コラムでは、国内外の最新動向を整理したうえで、化学業界が今すぐCFP開示に向けて動き出すべき理由を解説します。

CFP(カーボンフットプリント)とは

CFP(Carbon Footprint of Products)とは、ある製品・サービスの原材料調達から製造・輸送・使用・廃棄・リサイクルに至るまで、ライフサイクル全体で排出された温室効果ガス(GHG)の量をCO₂換算で表したものです。

製品単位での排出量を「見える化」する手段として、近年急速に注目が高まっています。企業レベルの排出量管理(Scope1〜3)と似て非なるものですが、CFPはあくまで製品・サービス単体に紐づく排出量である点が特徴です。

現在の状況:「義務」ではないが「事実上の必須」になりつつある

■日本国内の動き

現時点(2026年6月)において、日本国内でCFPの算定・開示を法的に義務づける制度は存在しません。2025年2月に環境省・経済産業省が連名で公表した「カーボンフットプリント表示ガイド」も、企業が自主的にCFPを算定・表示する際の指針であり、義務的記載事項を定めるものではありません。

しかし、これは「やらなくて良い」を意味しません。

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準の義務化という、より大きな枠組みの中でCFP開示の圧力は高まっています。2026年2月、金融庁は東京証券取引所プライム市場の上場企業を対象に、SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報開示を法的に義務化する内閣府令を確定しました。適用は時価総額規模に応じた段階的な導入で、3兆円以上の企業は2027年3月期から、1兆円以上の企業は2028年3月期からの適用が予定されています。 SSBJ基準の中には気候関連の情報開示が含まれており、そのなかでScope3排出量(サプライチェーン全体の排出量)の開示が求められます。Scope3の算定精度を高めるには、取引先各社がCFPを把握・開示していることが前提となります。大企業が上場企業としての義務を果たすためには、サプライヤーである中堅・中小企業にもCFP情報の提供が自然に求められる構造になっているのです。

欧州からの圧力:CSRDとCBAM

国内より一歩進んでいるのが欧州の規制環境です。

CSRD(企業持続可能性報告指令) は、EU域内の大企業・上場企業に対してサステナビリティ情報の開示を義務化する制度で、日本企業のうちEUに子会社や大規模事業所を持つ企業も対象となります。取引先がCSRD対応を行う大企業であれば、そのサプライヤーとして製品のCFP情報を求められるケースが増えています。 さらに注目すべきが CBAM(炭素国境調整措置) です。2026年1月から本格適用が開始されており、EU域外から輸入される製品に対して、その製造過程のGHG排出量に応じた炭素コストが課されます。現在の対象は鉄鋼・アルミ・セメント・肥料・電力・水素ですが、欧州委員会は有機化学品やポリマー(プラスチック製品)への対象拡大を検討しており、化学業界への直接的な影響が現実味を帯びています。

なぜ化学業界こそ、今すぐ動くべきか

★算定の複雑さが「後手に回るリスク」を生む

化学品のCFP算定は、他業界と比べて著しく複雑です。その理由は、化学製造プロセスの特殊性にあります。 一般的な製造業では「原料→製品」という比較的シンプルな物質の流れをたどればCFPを計算できますが、化学業界では次のような課題があります。

  • 連産品・副生品の問題:一つの製造工程から複数の製品が同時に生まれる(連産品)ケースが多く、どの製品にどれだけのCO₂排出を割り振るか(配分)の判断が極めて難しい
  • 複雑な物質・エネルギーの流れ:下流製品が上流製品の原料となる「内部サイクル」が存在し、排出量の二重計上を防ぐ処理が必要
  • 膨大な原材料の種類:多種多様な化学原料のそれぞれに対し、適切な排出係数を紐づける作業が発生する

これらの課題から、「CFPを算定したいが、どこから手をつければ良いかわからない」「算定を始めたが途中で行き詰まった」という声が化学メーカーの現場で多く聞かれます。

だからこそ、義務化の波が来てから慌てて動き出すのでは遅いのです。複雑な算定プロセスを整備するには一定の時間と体制構築が必要であり、今から動き始めることが競争優位を確保するための最良の選択です。

取引先からの要求はすでに始まっている

規制の話だけではありません。実態として、大手化学メーカーや電機・自動車メーカーを中心に、取引先からサプライヤーへのCFP開示要求はすでに現実のものとなっています。

BMWはTier1サプライヤー1万2,000社以上にLCA実績データの提出を要請した事例が知られています。こうした動きは自動車業界にとどまらず、電子部品・素材・包材など川上の化学業界にも確実に波及しています。

「まだうちには来ていない」という状況も、1〜2年後には変わっているかもしれません。要求が来てから初めて算定を始めると、顧客への回答が数ヶ月単位で遅れ、取引関係そのものに影響を及ぼすリスクがあります。

CFP開示が「競争力」になる時代

一方で、CFPはリスクへの対応だけでなく、差別化の武器にもなり得ます。

製品選定の基準が「価格・品質」から「価格・品質・環境負荷」へとシフトするなか、CFP値の低さは調達先選定における優位性になります。特に欧州向け輸出において、CBAM対応済みのCFPデータを持っていることは、競合他社との明確な差別化ポイントとなります。

化学業界がCFP開示に向けて取るべき3つのステップ

STEP 1:まず1製品から算定を始める

算定経験ゼロから全製品を一度に対応しようとすると、リソース不足で頓挫するケースが大半です。まず1〜3品目の主力製品でCFP算定を行い、社内のノウハウと体制を構築することが現実的です。

STEP 2:算定ロジックを標準化する

製品ごとにバラバラの方法で算定すると、将来的に比較・検証が困難になります。ISO 14067や経産省・環境省のCFPガイドラインに準拠した算定ルールを社内で標準化しておくことが重要です。

STEP 3:開示体制と更新サイクルを整える

CFPは一度算定して終わりではなく、原料や製造プロセスが変わるたびに更新が必要です。定期的に算定値を見直し、取引先や規制当局に適時開示できる体制を整備しておくことが、長期的なコンプライアンス対応の基盤になります。

まとめ:「義務化前」こそが最大のチャンス

CFPの開示は、現時点では法的義務ではありません。しかし、SSBJ基準の段階的義務化・CBAMの対象拡大・取引先からの実態的な要求という3つの力が同時に作用し、事実上の「義務化フェーズ」は着実に進んでいます。

特に化学業界は、複雑な製造プロセスや副生品の扱いから、CFP算定に時間と専門知識を要します。義務化を待ってから動くのではなく、今この段階で体制を整えることが、将来の競争優位と取引継続の基盤になると言えるでしょう。

はじめの一歩としてEcoLumeではじめてみませんか

本コラムでは、CFP開示をめぐる規制の最新動向と、化学業界が今から動き出すべき理由について解説しました。義務化の波が本格的に到来する前に、まずは「自社製品の排出量の内訳を把握したい」「どの製品・原料の影響が大きいのかを知りたい」といった小さな一歩から取り組みを進めることが重要です。その第一歩として、製品単位での排出量を”見える化”するCFP算定に着手することは、有効なアプローチとなります。

一方で、実際の算定には専門知識やデータ収集の負担が伴い、「化学品の複雑な製造プロセスにどう対応すれば良いか分からない」「副生品や連産品の配分をどう処理するか判断できない」といった課題に直面するケースも少なくありません。

こうした課題に対して、化学品向けCFP算定支援サービス「EcoLume®」では、日本の化学業界で広く使われている住友化学開発の「CFP-TOMO®」を計算エンジンとして使用し、算定範囲の整理からデータ収集、算定、活用までを一貫して支援します。

①算定支援コンサルティングサービス、②算定業務代行サービス、③算定システムの3つの提供形態により、お客様の状況や検討フェーズに応じた柔軟な対応が可能です。まずは自社の現状を把握し、CFP開示への備えとして、EcoLumeでCFP算定を始めてみてはいかがでしょうか。

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